京都・高山寺に伝わる絵巻物「鳥獣戯画」は、12世紀から13世紀にかけて制作された日本美術の至宝です。作品の中に登場するユーモラスで生き生きとした動物たちの描写は、兎や蛙、猿などが人間のように振る舞う愛嬌ある姿を通して、見る者に笑顔と深い考察をもたらします。これらの動物たちは、時代を超えて私たちに楽しさや共感を与え続けています。こうした「鳥獣戯画」に見られる表現は、日本美術の中で長く親しまれてきた「動物画」の伝統にもつながっています。
動物画は、古代から現代に至るまで、さまざまな文化や時代を通して描かれてきた重要なテーマの一つです。日本画においては、動物たちの持つ生命力と自然との調和を追求し、繊細で豊かな表現力を持つ花鳥画など、数多くの作品が誕生しました。江戸時代以降、狩野派や円山派の画家たちがその表現をさらに洗練させ、今日に至るまで動物画は日本画の一分野として進化を続けています。
本展では、「鳥獣戯画」の世界を再解釈した「現代鳥獣戯画」を中心に、動物たちの豊かな表情や動きを、伝統的な日本画の技法で描いた様々な動物画をご紹介いたします。古典の題目に現代の感性が融合して生まれた新しい「鳥獣戯画」の世界を、ぜひご堪能下さい。